幼馴染は僕が女の子と仲良くなりそうになるとパニックになる

@abay

第1話

幼馴染が女の子と話してる僕を見て、焦りだしたんだ。


「幼馴染」って響き、なんか特別だよな。子供の頃からずっと一緒にいるなんて、普通に考えたら運命みたいなものかもしれない。だけど、大人になるにつれて、そんな運命の糸は少しずつ解けていくんだ。


彼女の名前は須淳奈井井(すじゅんないい)。僕の幼馴染で、クラスの中でも一番の美人だ。昔は一緒に遊んでいたけど、いつの間にか、距離ができ始めたんだよな。あの頃は、僕たちがただの友達じゃない、そう思ってた。でも、今じゃ彼女と呼び合うニックネームさえ、もう使わない。お互い恥ずかしくなったのか、距離が広がるにつれて、自然とそうなってしまった。


それでも、僕はバカみたいに、彼女のことが好きだったんだ。気づいたら、毎日のように彼女を目で追っていてさ。けど、周りの噂が広まるにつれて、自分が彼女にふさわしくないって、だんだんと思い知ることになった。


最初は彼女も少しだけ冷たくなって、だんだん距離を置き始めた。そして今では、もう僕を避けているようにしか思えない。そう、僕は彼女と一緒にいられないんだ。周りの言葉に影響されすぎて、自己嫌悪がどんどん深くなっていった。


その結果、僕は女の子と話すことすら怖くなった。中学では、友達は全員男だけ。誰とも付き合う勇気なんて、もちろんなかった。


でも、高校に入って、クラスメイトの一人、ハルヒと出会った。彼はイケメンのくせにオタクで、何だか話しやすかったんだ。


「田中、これ見てよ。俺の新しい嫁!」


彼は得意げにスマホを見せてきた。


「おお、めっちゃ可愛いじゃん。」


僕もつい、そう答えてしまった。


「でしょ?でも、もう俺のだからな!」


「ああ、わかったよ。俺はまだカラネ推しだから。」


僕らがそんな話をしていると、背後から女の子たちの視線を感じた。振り返ると、そこにいたのは須淳奈だった。彼女はクラスの女子の中でも特に綺麗だ。きっと僕たちみたいなオタクが話してるのを見て、気持ち悪いと思ってるんだろうな。でも、ハルヒに対してはどうなんだろう。彼はイケメンだから、そうは思われないかも。


「なあ、田中。今日、帰りにゲームセンター行こうぜ。ヒデも誘うからさ。」


「今日はやめとくよ。なんか疲れちゃって。」


「お前、またランク戦やってるのか?世界ランク目指すのはいいけど、無理しすぎるなよ。」


「まあな。でも、目標達成したら、もうやめるつもりだよ。それからはもっと自信をつけたいんだ。」


「いいじゃん、その目標。俺も応援してるぜ、田中。困ったことがあったら、いつでも相談してくれよ。」


「ありがとう、ハル。」


その日の放課後、僕はいつもよりゆっくり歩いていた。前を歩いていたのは、彼女。須淳奈だった。僕は意識的に歩調を緩めて、彼女との距離を広げた。下手に近づくと、彼女に気づかれるかもしれないし、変な空気になるのが怖かったんだ。


彼女は途中でコンビニに寄った。僕はそのまま早足で歩き続けた。どうしても彼女の後ろを歩く状況にはなりたくなかったから。


「僕はもう、須淳奈と仲良くすることはできないのかな?」


そんなことを考えながら、心の中がぎゅっと締め付けられるような感覚を覚えた。彼女は僕の初恋だった。でも、自己嫌悪が芽生えた瞬間から、僕は気づいたんだ。彼女が僕と一緒にいても、彼女は幸せにはなれない。そう思うと、彼女の幸せを願う自分が、彼女の側にいないことに納得してしまった。


それでも、恋愛に踏み出すことができないまま、僕は男友達だけで自分の世界を作り始めたんだ。見た目なんて気にしない、ただ楽しく過ごせる仲間たちと。


「ただいま!」


「おかえり、兄ちゃん!」


家に帰ると、妹のミノルが笑顔で迎えてくれた。彼女は僕が唯一、自然に話せる女の子だ。だって、妹だからな。


「今日こそ、目標達成するつもり?」


「まあ、それが難しいんだけどさ。達成できたら、ゲームはもう適度に楽しむつもりだよ。」


「がんばってね、兄ちゃん!」


僕がリビングに入ると、台所で母さんが夕飯を作っていた。


「手伝おうか?」


「いいわよ、ミノル。田中、お風呂入ってきたら?」


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