電動ニンゲン

沼津平成

第1話

 今日は大事な会議の日だってのに、取引先から電話がかかってきた。俺は充電を確認した。残り7パーセントだ。充電すれば、できるだろう。

「お、三谷か」

 予想通り笹川部長が出てきた。

「はい、三谷でございます」

 なんでチームメイトはこんな新米にベテラン部長を押し付けてきたかな?――。

 ため息が出る話だが、笹川部長を唯一志望したのは、この俺だ。


「おお、こんど吞まないか?」

 部長はあ~っと一杯やるまねをした。

「え~、いっつもヤってるじゃないすか~」

 俺はいちゃつくふりをしてコンセントを探す。

「ああ、そうなんだけどな――」

 部長は電話の向こうで笑っているだろう。


 いかん、からだがとろけはじめた。ロボットは火によわい。誰かがあぶっている――。

 充電が少なくなると全ロボットはとろけはじめるのだ。 さよなら人間。いい一生だった。――でも、欲張りな俺は思った。 次転生するときは、ちゃんと古代のようにまともな人間に生まれ変わりたいな、と……。

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