この男の愛し方、異常です。

青崎ねいこ

拒否された告白

第1話

「やっぱ好き」


 うっとりとした様子で言うのは早見郁人はやみいくと

 たった今、目の前に立つ浅川律あさかわりつに振られたばかりである。


「聞いてた?興味ないって」


「浅川さんなら、そう言うと思ってたよ」


「は?」


 本当に言っている意味がわからない。


「あ、そう。じゃあ」


「まって」


  腕を掴まれる律。


「分かっていないよね。僕は君に心底惚れてるんだ。絶対に僕のモノにする」


「だからなに」


「僕がそれを伝えたってことは、もう君は僕から逃げられないし、関係ないふりはできない。これから君は僕に惚れられているという事実に嫌でも向き合うことになる」


 純粋無垢なその瞳が恐ろしく感じる。

 振り解く律。


「きもい」


 それだけ告げて去る律。

 残された郁人がそっと自分の口元に手を当てる。こぼれ出てしまう笑みを隠すように。


 卒業さえ出来ればいい。あとは興味はない。勉強も部活もましてや恋愛なんて。人間関係のトラブルの元だ。

 女子生徒とはそれなりに良い関係を築いている。それだけは波風を立てないようにしてきた。

 それなのに。あの男、早見郁人。彼は学年一の秀才で先生からの評判も良い。成績も態度も悪い律とは真逆の存在だ。だからちょっと自分の周りにはいないタイプに興味が湧いたのだろう。

 その程度に考えていた。それが浅はかであった。

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