13話 目覚め
「ハート!みんな、ハートが目を覚ましたわよ!」
僕を呼んでいる声がいやに響いて、目眩と吐き気を抑えながら天井を仰ぐ。
知らない場所だ。
左腕を見ると、腕は見事にくっついており、少しぎこちないがグーパーも問題なくできた。
まだ視界がボヤつく。
「リエルが治したの?凄いなぁ、リエルは。」
「私じゃないわよ。ハート…私たちになにか隠してることあるでしょ?」
「え?」
リエルじゃないなら誰が?あの護衛の中に治癒魔法士が居たのかな?と考えていると、報せを聞いたアレクが勢いよくドアを開けた。
「ハート!良かった、目を覚ましたんだな!」
「うん、ついさっきね。ところで、ここはどこ?」
「ここはルセル伯爵家の客室。あなた、三日も眠っていたのよ。」
「三日?!」
「そう、疲れてるだろうしご飯食べてからまた話しましょう。」
それからご飯を食べ、着替えを終えたところで二人から話を聞いた。
◆
「リエル、成功したのか!ハートの腕が治ったぞ!」
「違う、私じゃないわ。魔法が効いてる手応えは全くなかったもの…。」
さっきの光も、私の治癒魔法とは全く別のものだった。一体、ハートに何が起こったの?
「何はともあれ良かった。二人とも怪我は無いか?」
「うん、俺たちは大丈夫だけど…ハートはまだ目を覚まさないみたいだな。」
さっきまでの切羽詰まった顔はどこえやら、安堵に緩んだ顔しちゃって。
「あの、お取り込みのところ申し訳有りません。この度は、本当にありがとうございます。」
「ミーネ様、まだ休まれていてもいいのですよ?」
「良いのです。賊も鎮圧されたのに、恩人に礼を欠くようなことはできませんもの。」
話にあったルセル家のお嬢様は礼儀正しく、私たちにお辞儀をする。栗色の髪がツヤツヤしていて、流石貴族だなんて思ってしまう程、可愛らしい少女だった。
「よろしければルセル家の屋敷に泊まって行かれませんか?もう日も暮れてきていますし、皆様お疲れでしょう?改めてお礼もしたいので、是非お越しください。」
「でも、帝都に遅れちゃうぞ。」
「アレク、ハートも意識がないんだ。ここはお言葉に甘えよう。帝都には俺から便りを出しておこう。」
それから私達は馬車を整備して、ルセル家の馬車に導かれて屋敷に着いた。
◆
「そうだったんだ、貴族だとは思っていたけど、まさかの領主様の娘さんだったんだ…。」
「私も驚いたわ。帝都にはもうしばらくしてから向かうそうだから、今はゆっくり休んで。」
「腕切り落とされたんだからあんまり無茶すんなよ。」
「あんた庇って貰っといて軽口叩いてんじゃ無いわよ。あの後真っ白だったあんたの顔面をハートに見せてやりたいわ。」
それから二人がやいのやいのと言い合いを始め、いつも通りだなんて思いながら笑っていると、騒ぎを聞いたミーネさんと騎士様とタリオさんが入ってきた。
「初めまして、ハートさん。お加減はいかがですか?この度は本当にありがとうございました。改めてお礼を言わせてください。」
丁寧に頭を下げるミーネさんを慌てて止め、当たり障りのない返事をする。
「少年、とても勇敢であった。よくやった。」
「ハート、無茶をさせたな。私がいながら、本当にすまない。」
「あの痣の男が腕を刎ねられて死んだと思ってたのは皆同じですよ、謝まらないでください!」
「すまない、気を使わせたな。さっきまで意識不明だったんだ、ゆっくり休むといい。大人数だと体に触るかもしれん。私達はこれで失礼するよ。」
「私たちもまた後で来るわね。」
「皆ありがとう。」
その日は客室で昼食と夕食を取り、またお見舞いに来たリエルとアレクと話して夜を迎えた。
僕はあの本を手に出して何となくペラペラと眺める。
相変わらず空白が多いが、最後の方に差し掛かると文章が追加されていた。
この世界のものではないその文字を、僕は何故か読めてしまう。内容はこうだった。
◆
とある男は国のために男児だからと戦争に赴いたが、部隊は崩壊し、数人の生き残った仲間と共に逃げ延びている間に終戦を迎えていることを知った。
終戦に安堵したのも束の間、なんとか故郷に帰ろうと人里に近づくと、元敵国の人間に捕らえられてしまう。
そうして放り込まれた監獄での過酷な日々、祖国に残してきた妻や息子たち、死んでいく仲間、そういったことが生々しく書かれていた。
結局一人生き残った彼は正式な終戦の調整の後に送還されることとなり、その後は家族と再会し幸せに暮らした。
悲劇と幸福の男の生涯を綴った物語だった。
◆
きっと、これは彼が、僕が持っていた本の元々の内容なんだ。一度、夢の中で彼の荷物を見たことがあるが、この著者のラストトネームと一致している。
彼のお父さんはこの本を書いた人のようにお爺さんでは無いから、多分彼の祖父の手記のようなものだと思う。
一体、なぜ今これが記されたのか不思議でならなかったし、リエル曰く僕の腕は奇跡的にくっついたらしい。
もしかしたらこの転生技能が関係有るのかな。と色々と考えているうちに、いつの間にか眠りについてしまっていた。
そしてまた、僕はあの夢の中に足を踏み入れた。
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