第31話

涙目になりながら佐久間さんと弟さんを睨むと、歪んだ笑みを返された。


「ふふ可愛い。紗奈ちゃん分かってる? そんな顔をされたら踏みにじりたくなるって」


「っ、」


「家に帰りたいのなら、反抗しなければいいだけだよ。簡単でしょ」


弟さんが私の手をまた握って、赤く血が滲んだ箇所に口付けた。

そして舌を出して舐めとる。


「いっーー」


ピリピリした痛みに声をあげると、そのまま歯を立てられた。



「気を付けてね紗奈ちゃん」


わざと傷口を抉る動きに、涙が溢れる。佐久間さんがそんな私の様子を見てクスクス笑う。



「薫は残虐性があるからね。素直に言うこと聞いていた方が賢明だよ」


「っ、いった……」


痛い、痛い。

なんで私がこんな目に合わなくちゃいけないの。

見ず知らずの人に犯されて、更に言うことをきかないと暴力されるなんて。


止めてくれそうにない2人に歯を食いしばって耐えていると、ふと泣き声が玄関で響いた。


「っ、り、里奈!?」


動揺し、驚いた声をあげたのは玲央くんで。はっと里奈の方を見るとボロボロと涙を流しながら泣き声を出してる里奈がいる。


「お、お姉ちゃんを返してっ……傷つけないで……っ」


「っ、里奈……」


そうだ。

私は里奈を守らなきゃいけない。

自分のことよりも里奈をここから早く遠ざけてあげないといけなかったのに。

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