第24話

「兄さん、ありがとう。昨日咲とようやく付き合えることになったんだ。」


「咲も慧のこと好きなの分かっていたからね、むしろ遅かった方なんじゃないかな」


「累……。私の気持ちバレてたのね。そんなに顔に出てたのかしら」


「気づいて無かったのは慧ぐらいだったんじゃないかな」


累先輩の言葉に更に顔を赤くした咲さんは、ムッと唇を尖らせた。

大人っぽい雰囲気のある咲さんが幼いようなことをして、そのギャップに見蕩れていると目を隠されてしまった。



「俺がいるのに女とはいえ、他の奴に見蕩れるのは許さないよ美羽ちゃん。それが例え無機質なものであろうと、美羽ちゃんが見蕩れるのは俺だけにして」


「!!」


そんな無茶な。

というか、女の子相手でも駄目ってどれだけ狭量が狭いんですか……。


それも無機質だって駄目って。


そんなの酷過ぎる。



「兄さん達はデートに行くの?」


「美羽ちゃんがどうしてもって言ってね。その為に昨日は積極的に頑張ってくれたから」


「っ!! 余計なこと言わないで下さい」



羞恥で顔が熱くなったのが分かる。

先輩はそんな私を見てクスケス笑ったけれど、2人に聞かれてしまった恥ずかしさから顔を隠したかった。



「なら、咲と2人きりだ。父さんと母さんも今日は朝からデートで居ないし、ね」


「っ!」



慧くんの言葉に咲さんが潤んだ瞳を向けていた。


あ〜慧くんも累先輩に似て手が早そうだもんね。

慧くんの咲さんに対する執着ぶりは累先輩と酷似するし、そうだよね。


きっと抱く気なんだろうなぁ。


思わず咲さんに同情の目を向けると、慧くんからニヤリと笑われてしまった。



「兄さん今日は遅くまで帰って来ないで美羽と2人きりでいるといいよ」


「っ!!?」


「はは。慧に言われなくてもそうするつもりだよ。ねぇ、美羽ちゃん? たまには別な場所っていうのもいいよね」


「!?!?」



何を言っているの!?

私は至って健全な普通のデートをするつもりで……。



グイグイと腕を引っ張る先輩に、嫌な予感がして踏み留まろうとするけど引き摺られてしまう。



「美羽」


慧くんが私のことを呼び、振り返ると親指を立てられた。



「っ……!」



そのニヤリ顔は何度も見た累先輩のようで。


やっぱりこの兄弟は似ていると思わずにはいられなかった。






その後、私が思う普通のデートが出来たかどうかは察していただきたい。



「累先輩は酷いっ……っ」


「あー可愛いなぁ美羽ちゃん。大好き」


そんな言葉をもらっても全然嬉しくないっ。

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