第17話

「あんまり嫉妬深いと別れられるぞ。まぁ、お前は別れるつもりなんてゼロなんだろけど」



ニヤッと笑い、揶揄うように言ってくる。

ハッと鼻で笑い返す。

別れられる、ねぇ。

優香にそんな度胸がないことも、もし別れ話をしたらどうなるか分かっているであろうことも分かっている。


優香を捕らえているようで、実は俺の方が捕らわれているだなんて笑ってしまう。




「そんなこと有り得ない」


「すげぇ自信」


「かもな」



感心したように見られ、苦笑した。


未だにに鳴らない返信の音に小さくため息をついた。

俺と、同じ想いを抱いて欲しいと願うのは我儘かもしれない。

優香が本当は俺のことを好きではないと知っていると言ったらなんて顔をするだろうか。



だけど、手放せないし絶対に手放したくない。

少しでも想いが俺へと向いてくれればとメールを送り続ける。









▫️


……さっきからスマホが鳴っているのが分かっているけど、気付かぬふりをしていることに罪悪感がこみ上げる。


講義はとっくに終わっているし、あとは帰るだけなのだけれど私はまだ学内にいる。


課題を終わらせてしまおうかと思ったけれど……。



大翔はあと2限ぐらい残っている筈だ。

本当は待っていなければならない。でも……。



いつも縛り付けられているし、自由なんてない。

たまに一人で帰るくらい、いいよね。

ぼーっと見つめていたスマホをカバンの奥へと入れ、腰をあげる。



気づけば大学を出てしまっていた。

後で大翔に怒られるだろうな…。


想像するだけで憂鬱になるが、今だけは忘れることに決めた。




久々の自由に、安堵する。

いつも大翔といるときは、寄り道することにいい顔しないから、真っ直ぐ家に帰るようなんだよね。

だけど今は大翔はいない。


コンビニに寄ってデザートでも買おうかな。

浮かれている自分に呆れてしまう。



私は意を決して目線に見えたコンビニへと足を向けた

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