第14話

何で、こんなこと…っ。


痛みに悶えてる私を見て愉快そうに笑ってる大翔は、私の涙を舌を出して舐めてきた。



「優香ってば分かりやすいからね。俺がしてなきゃ、優香が噛み付こうとしてだしょ。だから、ね。お仕置をと思って」


「〜っ。酷い…」



だからってこんな思いっきり噛むことはないじゃない。

口の中に広がる鉄の味に眉を顰める。


無理やり起き上がって、洗面所へと足を向ける。

その後を大翔がついてきたけど、無視をした。



水で口をゆすぐけど噛まれた箇所の痛みに声を出しそうになるが必死に我慢した。



何度かゆすぎ、漸く鉄の味がしなくなりほっとしたとき。

壁に寄りかかるように足を組んで立っていた大翔が苦笑いをした。



「怒ってる?」



しゅんとした顔で聞かれたが、私は無言で頷いた。

そんな叱られた犬みたいな表情されたってそう簡単に許すわけがない。

本当に痛かったし、血だって出た。


ムッとして大翔から目を逸らすと、ため息が聞こえてきた。

ため息をつきたいのは私の方なのに、なんで大翔がため息をつくの。



「優香冷たい」


「な、なにそれ……」


「そもそも噛み付こうとしてたのは優香だったのに」


「それは息が苦しかっただけで…。本当に噛もうとはしてなかったよ」



そんなことが出来てたらとっくにしてた。

だけど、大翔に敵わないのに、私が出来るわけがなかった。


もし、反感などしてたら……酷い目に合うのが悲しいけど分かりきっていたから。



これからもきっとできないだろうけど。



「うん。分かってた」


「っ!? それなら、何で…」


「俺から逃げたいとか考えてた悪い子には仕置が必要だろ」



突然、ワントーン低い声で言われビクッと身体を震わせる。

口元は笑っているというのに、目は笑っていない。

心の中を見透かされているようで、顔を俯かせた。

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