青のエスキス

菫野

青のエスキス

空にゆびで触れやうとして輪郭は解けてゆけり青のエスキス


小麦粉に隠れたならばフェトチーネともなりきみの舌を待ちたし


夢に『月のうた』のたの字がかすれたることさびしがる紫の上


安西冬衛全集揃ひ一万と告げられし耳 たかき耳鳴り


吹く風より笛をとりだす手つきにて医師よわが尾を切断すべし


月見バーガー蔓延る街で逃げまどふ青きひかりを小壜につめる


紙のはがし跡より天使あらはれて典雅にフラジョレットを吹けり


まぼろしのけもの来たれり露草は蹄の触るるたびに枯れゆく


解かれた胸ゆ零るる運河また運河にうつるさかしまの家


水に栗ひたして時を待ちながら壊したければ壊すがいいと


花柄のワンピース着て岸に立つわたしの翅が海峡を越ゆ

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青のエスキス 菫野 @ayagonmail

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