第62話

「若頭、おはようございます、あれ、あの女は出かけてるんですか」


工藤組の俺にやけに懐いてる功太が部屋を見回した。


「ああ、今ちょっと出かけてる」


「そうですか、どうですか、ウブなお嬢さんは、よく締まりますか」


「あ、そ、そうだな」


まさか自分で慰めてるなんて、口が裂けても言えねえ。


「若頭はすごいっす、女一人に億の金を払っちまうんですから、尊敬します」


俺は何も言えず、黙っていた。


まゆ、今頃、外科医とセックスしてるんだろうな。


「くそっ」


「若頭、大丈夫すっか」


「お前、なんか用があってきたんじゃないのか」


「あっ、そうでした、最近、高山組の動きが怪しいんです、なんたって、

若頭に恨みを抱いていますから、十分気をつけてください」


「そうだな」


「若頭はどう思ってるかわからないですが、世間ではあの深海まゆは、若頭の女ってことになってますから、出かける時は護衛つけた方がいいかと思いきました」


俺はまさかと思ったが、嫌な予感を掠めた。

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