第26話

「いえ、何も」


「そうか、実は、久しぶりに潤がアメリカから戻ってきていて、まゆも思いが溢れたんだろう、潤に抱きついてな、迫ったらしい、お恥ずかしい話だ、淫らな娘で許してやってくれ」


俺は何も言わずにスマホを切った。


まゆが心配になり、同僚に夜勤を交代してもらい、マンションに向かった。


部屋に入ると、真っ暗で、まだまゆは実家にいるものとばかり思っていた。


ところが、電気をつけると、暗い部屋にしゃがみ込んでいたまゆがいた。


「まゆ、どうしたんだ」


「祐志さん」


俺の顔を見上げた時、首筋のキスマークが目に入った。


そして足は傷だらけで、尋常じゃない状態を物語っていた。


まゆは、目に涙を溜めて、「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝っていた。


俺は大体の察しはついていた。


「まゆ」


俺はまゆをゆっくりと抱きかかえて、ベッドに寝かせた。


まゆの指先を俺の唇に当てて、キスをした。


まゆは俺に抱きついてきた。


「何があったんだ」

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