第33話

「俺は祐を二十歳まで育てる責任がある、だから俺と結婚すると言うことは祐の母親と言う責任も同時に背負う事になる」


私は黙って彼の言葉を聞いていた。


「だから俺の結婚相手は、祐が懐く事が第一条件だ、そして俺の仕事は美容師、女性客を相手にする仕事だから、理解を示してくれる事が必要不可欠になる」


彼はじっと私を見つめた。そして・・・


「俺は凛を結婚相手として選んだ、俺にとって凛はすべてを満たしてくれると判断した、しかし、

凛にとって俺は結婚相手として相応しくない」


どう言う事?彼は何を言いたいの?


「俺は凛を幸せに出来ない、でも俺は凛と結婚したい、残りの人生を一緒に過ごしたいんだ、これは俺のわがままだ、俺のわがままを押し通す事は許される事ではないが、この気持ちはもう止める事は出来ない」


そして彼は秘密を明かした。


「俺は末期がんに侵されている、余命宣告を受けた、俺の命はあと一年だ」


「冗談はやめてください」


「冗談でこんな事言えると思うか?」


私の全機能が停止したような錯覚に陥った。

彼があと一年でこの世から消えるなんて・・・


「凛、凛の気持ちが俺にない事はわかってる、一年だけで構わない、俺の側で俺だけ見てくれないか」


涙が溢れて頬を伝わった。

彼は驚きの表情で私の涙を拭ってくれた。


「凛・・・」

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