第28話

祐くんは疲れたのかぐっすり眠ってしまった。

今日は土曜日だからまだ明日学校は休みで、ちょっとほっとした。


しばらくしてドアのチャイムが鳴った。

大和さんが祐くんを迎えに来てくれた。


「凛、俺だ」


大和さん、声を聞いただけでドキッと心臓が跳ね上がった。


「はい、今開けます」


ドアのロックを開錠した。


「大和さん、お仕事お疲・・・」


とそこまで言いかけた途端、手を引き寄せられて抱きしめられた。


「大和さん?」


「凛、会いたかった」


その時祐くんが目を覚まして、私達の姿を見た。


「パパ」


祐くんの声を聞いて、私は慌てて彼から離れた。


「祐くん、目が覚めたの」


「うん」


「パパ、あのね、凛ちゃんの事ずっと好きだよね」


「ああ、好きだよ」


「他の人好きにならないよね」


祐くんは何を言い出すのかと思い焦りを隠す事が出来なかった。


「祐くん!」


「凛以外好きにならないよ」


「パパ、僕ね、凛ちゃんにママになって欲しいんだ」


祐くんの突然の願いに彼の反応が気になった。


「祐、その願いを叶える為には、凛にパパを好きになって貰わないと駄目だ」


えっ?私は既に彼に心を奪われていた、でも彼はその事を知らない。


「凛ちゃん、パパの事好きだよね」


二人に見つめられて、私はどう答えていいか迷っていた。

祐くんのママにはなれるかもしれないけど、大和さんの奥さんは絶対無理。


「まだ、よくわからないかな」


「パパ、もっと頑張って凛ちゃんに好きになって貰わないと駄目だよ」


「そうだな、さ、もう遅いから帰るぞ」


「凛ちゃん、また遊ぼうね、おやすみ」


「はい、おやすみなさい」


「凛、今日は助かったよ、じゃ、おやすみ」


彼と祐くんは町の暗闇に車を走らせて消えた。

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