第10話

動物園に行った。

何年ぶりだろう、祐くんはずっと私と手を繋いでいた。

車から降りて来た時は全く笑顔が無かったのに、今はニコニコして私に懐いている。


「祐、珍しいなあ、凛の事気に入ったのか?」


「うん、凛ちゃんを僕のお嫁さんにしたい」


もう、ビックリ、この子ほんとに六歳なの?

私が驚いていると、彼が透かさず口を挟んできた。


「駄目だ、凛は俺と結婚するんだ、祐は諦めろ」


は?何言ってるの、さらっとプロポーズしちゃって、着いて行けないよ。


「もう、大和さん、子供に向かってなんて話してるんですか?」


「俺は本気だ」


そして、私をじっと見つめた。


「凛ちゃん、僕お腹空いたな、ご飯食べに行こう」


祐くんがその場の空気を変えた。

この子はほんとに子供なの?

そう言えば朝から違和感を感じていた、それが何なのか分からなかった。

でも、この時感じたのはこの二人全然似てない。

顔立ちも立ち振る舞いも性格も親子には程遠い。


「凛、ご飯食べに行こう、リクエストは?」


「あっ、祐くんは何食べたい?」


「僕は好き嫌い無いから、パパは玉ねぎとピーマン食べられないからパパがいつも何処に行くか決めるんだよ」


「おい、祐、凛にばらすな、かっこ悪いだろう」


「パパ、それなら好き嫌い無くさないと駄目だよ」


「しょうがねえだろ、食えねえんだから」


この二人親と子が逆転してる。

私は思わず笑ってしまった。

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