第35話

亜紀は僕のマンションに足を運んだ。


「どうぞ、入って」


「はい、お邪魔致します」


「ソファに腰掛けて、今何か飲み物持ってくるから、コーヒーでいいかな」


「はい」


亜紀と向かい合ってコーヒーを口へ運ぶ。

じっと亜紀を見つめると、恥ずかしそうに俯く。


ずっとこのまま二人で時間を過ごせる事が出来たらどんなにかいいだろうと妄想を膨らませた。


「亜紀の話って何?」


沈黙の中、僕が口火を切った。


「あのう、ハウスキーパーのお仕事をお受けしようかと思いまして……」


「えっ?ほんと?」


僕は嬉しさのあまり、立ち上がって亜紀に近づいた。


亜紀はびっくりした表情を見せた。


「その前にいくつかお尋ねしたい事があります」


「いいよ、何かな」


「このお仕事は副社長個人との契約で、会社は関係ないんですよね」


「僕個人との契約だよ、安心して、理樹は関係ない」


亜紀のほっとした表情が見えた。


「それから、住み込みのことですが、やはりやめたほうがいいと思うんですが」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る