第23話

「亜紀、ごめん、連絡出来なくて」


「はじめから連絡するつもりはなかったって事ですか」


「それは誤解だ」


「でも、理樹さんには婚約者がいらっしゃいますよね」


「俺もニューヨークから戻って知った」


「えっ?」


「でも、会社の存続のために、俺は婚約者と結婚する、亜紀との約束を守れなくてすまない」


そうだったんだ、私、騙されたわけじゃないんだ。


ちょっと口角が緩んだ。


そんな私の表情を見て、理樹さんは副社長との事を聞いてきた。


「健の秘書ってどう言う事?それに恋人だなんて、心臓が止まるかと思ったよ」


「副社長の恋人ではありません、それと秘書のことは、このビルに足を運んだ時、偶然副社長に入り口で声をかけられて、僕の秘書になって欲しいって頼まれたんです」


「そうだったのか」


「でも、ニューヨークで何かあったって見抜かれています」


「あいつは感が鋭いからな、もう、戻った方がいいな、あまり長くなるとあらぬ噂を立てられるから」

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