第17話

私は東條ホールディングスのビルの前にいた。


まさか、また、このビルに足を運ぶ事になるなんて夢にも思わなかった。


正面入り口から受付に行くと、副社長さんが既に待機してくれていた。


「また、逢えて嬉しいよ」


副社長さんはニッコリ微笑んで、私をエレベーターにエスコートしてくれた。


エレベーターで最上階に向かう。


じっと見つめられてる?何?もう、どうしよう。


「緊張しているのかな?」


「えっ?あっ、はい」


「僕も、素敵な女性と二人でこんな密室で緊張するな」


副社長さんはプレイボーイなの?


私は目線のやり場に困って、副社長さんに背を向けた。


エレベーターの窓から外が見えて、素晴らしい景色が広がった。


次の瞬間、耳元に何か感じた。


「綺麗だろ、この自社ビルを建てるのに五年かかった、理樹とガムシャラにつっぱしってきた、余裕なくてね、女性とゆっくり過ごす時間もなかった」


そして、私の肩を抱いて副社長さんの方へ向かせた。


「亜紀とゆっくり過ごす時間が欲しい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る