第十一章 お前を誰にも渡さない

第60話

俺はコンシェルジュの千賀より、連絡を貰った。


「お仕事中申し訳ありません」


「大丈夫だ、雫がどうかしたか?」


俺は今回の事で雫に何かあったら連絡をくれる様に、コンシェルジュの千賀に伝えていた。


「雫様が、買い物へお出かけになってから、いまだに戻っておりません」


「雫は出かけたのか?」


「はい、お出かけにならない方がよろしいとお止めしたのですが・・・」


「わかった、いつもすまない」


「とんでもございません」


雫、何処へ行ったんだ、まさか、また出て行ったのか?

俺はすぐにマンションへ向かった。


「冴木様、雫様はまだお戻りになりません」


「そうか」


俺は部屋に入って、テーブルの上の離婚届とメモとスマホが目に止まった。

やはり雫は出て行ったのか?

しかし、誰が離婚届を書かせたんだ。

俺はすぐに秘書の山元へ連絡した。


「雫の元へ離婚届を持ってきたのは誰だ」


「鈴木専務取締役と思われます」


「あのたぬきオヤジめ、勝手な事しやがって」


「奥様大丈夫ですか?」


山元は心配そうな口調で雫の様子を伺っていた。


「雫は離婚届にサインしてスマホも置いて出て行った」


「奥様はいつもご自分の事より、社長の事を一番に考えますから」


「ああ、鈴木専務取締役に責められたんだろう」


「奥様はどちらへ行かれたのでしょうか?」


「藤ケ谷琉の会社に行って来る」


「かしこまりました」


俺はあいつの元へ向かった。

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