第45話

私は峻からの電話にわざと出なかった。

峻は唯香さんを愛している、私への優しさは子供の為、チビちゃんが産まれたら私は離婚される、でも峻と離れたくないと強く思った。


その時部屋のドアが開き、そこに立っていたのは峻だった。


「峻?」


「雫、大丈夫か、電話に出ないから心配したぞ」


峻は自分を顧みず私の事が心配で病院を抜け出して来た。


「峻、病院を抜け出してきたんですか?」


「雫が心配でじっとしていられなかった」


峻は私を抱き寄せた、そしてキスをしようとした瞬間、私は峻から離れた。


「雫?」


「唯香さんの代わりはイヤです」


峻は私の言葉に驚きの表情を見せた。


「雫を唯香の代わりと思った事はない」


「だって唯香さんを愛しているんですよね」


「違うよ、この前も伝えただろう、愛してるのは雫だ」


峻はまっすぐに私を見つめた。

私は病室での事を話した。


「だって唯香さんとキスしてましたよね」


「唯香とキスなんてしてないよ、この間の別れ話に納得いかないと病院にやって来たんだ」


私は黙って峻の話を聞いていた。


「抱きつかれたのは事実だが、ちゃんと俺が愛してるのは雫だと伝えた、信じてくれ」


「ごめんなさい、今は峻を信じることが出来ません」


「わかった、俺が雫を利用しようとした事は事実だからな、でも今の俺の気持ちは違う、その事はわかってほしい」


私は下を向いて答えられずにいた。


「雫、俺は雫と別れないし、チビ助を取り上げることもしない、雫を愛してる、俺を信じろ」


峻は私にそう告げると病院へ戻った。

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