第44話

俺は病室で唯香を説得して、雫への気持ちを伝えた。

しかし、唯香は信じられないと言う表情を見せていた。


「峻、どうして?私への愛情は何処へ行ってしまったの?」


「唯香」


「峻、お願い」


唯香は俺に抱きついて来た、俺は彼女の肩を掴んで、引き離し「俺が愛しているのは雫だ」と伝えた。


あれから俺はある事に気づく、そういえば昨日雫は病室へ姿を表さなかったと・・・

今日もすでに時計の針は十二時を回っている。


雫はまた具合が悪いのか?まためまいでも起こしたのか?俺はスマホを手に取り、雫に電話した。

何度呼び出しても雫は出ない、どうしたと言うんだ、急に心配になり、コンシェルジュの千賀に連絡をした。


「冴木様、どうされましたか?お怪我の方は大丈夫でございますか?」


「大丈夫だ、忙しいところすまないが、雫と連絡が取れない、昨日から病院にも姿を見せないんだ、雫の様子を見てくれないか?この間めまいを起こして具合悪くなったから、心配になった」


「かしこまりました」


しばらくしてコンシェルジュ千賀より連絡が入った。


「冴木様、千賀でございます、雫様はお部屋にいらっしゃいました、冴木様からのお電話の事をお伝えすると、マナーモードにしてあったので気づかなかったとおっしゃっていました」


「そうか、忙しいところすまなかった」


「とんでもございません、雫様は具合悪い様子もありませんでした」


「わかった、手間を取らせたな」


「いいえ」


また雫に電話したが、やはり出なかった、しかも折り返しの連絡も無かった。

俺は嫌な予感が脳裏を掠めた。

しかし、雫が唯香との事を誤解して悩んでいたことなど知る術はなかった。

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