第38話

「あいつは雫を愛していない、何故わからないんだ」


「それでもいいの、私が峻を好きなの、それに今はずっと側にいて欲しいって言ってくれる、お腹の中の子を大切に思ってくれている」


わかってる、峻とは契約の関係だから私達の間には愛情は存在しないと・・・

それでも私を必要としてくれているから。

しかし、琉の口からとんでもない真実が告げられた。


「雫のお腹の中の子を大切に思ってるのは、跡取りとして必要だからだ、あいつは自分の子供を残せない、無精子症なんだ、雫は利用されているんだ」


自分の子供を残せない?だから父親のいないチビちゃんを妊娠している私を選んだ、峻が必要なのはチビちゃんだけ。

契約なのはそのため?私は利用されているの?

嘘であって欲しい気持ちと、それなら今までの事が納得いくと思う気持ちが入り混じり、私は混乱していた。


「雫、僕のマンションに行こう、この子は僕たちの子供だ、あいつに取られてもいいのか?」


私はパニック寸前で何も考えられなかった。

でもこのまま、琉についていく事は出来ないと思った。


「少し時間をちょうだい」


「わかった」


琉は「また来るよ」と言い残し、マンションを後にした。

峻が自分の子供を残せない、この事が真実なら理解不能だった事が一本の線で繋がる。

峻が私と契約した事、他の男性の子供を跡取りにしたいと言っている事、私は峻に確かめるべく、帰りを待った。

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