第五章 元彼との再会

第25話

私の荷物は峻が揃えてくれた物ばかりなので、バックだけでよかった。


「雫様、どちらにお出かけですか?」


コンシェルジュの千賀さんが声をかけた。


「ちょっと買い物に、もう記者の方もいないでしょうから」


私は心の中で、コンシェルジュの千賀さんにお礼を言った。

いつもお気遣い頂き感謝していますと・・・

もう、このマンションともお別れ、そして峻とも・・・涙が溢れて止まらなかった。


マンションを出て歩き出すと、一台の高級車が私の前に停まった。

ドアが開き車から一人の男性が降りて来た。


「雫、捜したよ」


藤ケ谷不動産社長藤ケ谷琉、チビちゃんの本当の父親だ。

私は何が起きたのか理解出来なかった。

なんで琉がここにいるの?


「雫、僕と一緒に行こう」


私はなんて答えればいいか戸惑っていた。


「冴木社長との婚約は破棄して、僕と暮らさないか、お腹の中の子供は僕の子供だろう?」


そう言って琉は私を抱き寄せた。

琉は何を言ってるの?

一夜の過ちだったはずなのに、そう思っていたのは私だけなの?


「雫、結婚しよう、その子にとってどっちが幸せかわかるだろう?」


「ちょっと、琉」


私は琉に抱えられる形で車に乗せられた。

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