第21話

私は彼をまともに見る事が出来なかった。

彼は私を抱きしめた。


「ごめんな、嫌な思いさせちまったな」


いつの間にか、秘書の山元さんは部屋を後にしていた。

部屋には彼と私だけになった。

彼は私にキスしようと顔を近づけた。

私は咄嗟に顔を背けた。


「どうかしたか」


「どうもしません、ちょっと疲れちゃって」


「そうか、もう帰ろう」


彼と私はマンションへ戻って来た、部屋に入ると彼は私を抱きしめた。

私の頬に触れて、唇を近づけた。

またしても私は顔を背けた。


次の瞬間、彼は私を廊下の壁に追いやり、私の両手を押さえつけ、強引に唇を重ねた。

舌が絡み合い、息が出来ないくらい、激しさが増して行く。

私は彼の胸を両手で押して距離を置いた。


「俺が嫌いになったのか?」


「違います、彼女いるのになんで私にキスなんかするんですか?」


彼は私の言葉に驚いた表情を見せた。


「彼女?彼女はいないよ」


「だって記者の方が峻はモデルと熱愛中だって・・・」


彼は声高らかに笑った。


「確かに唯香とは付き合っていたが、それも雫と知り合う前のことだよ、それ以来唯香とは会っていない」


私は納得いかない表情を見せた。


「雫、俺を信じろ」

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