第15話

「ただいま、雫?」


私は寝室で横になっていて彼が帰ってきたのに気づかなかった。

彼は寝室に入ってきて、私の顔を覗き込んだ。

私の頬に触れて、唇にキスをした。


私は目を覚まして、彼の顔が目の前にあることに驚きを隠せなかった。

彼は慌てた様子で私から離れた。


「た、ただいま」


「お帰りなさい、ごめんなさい、私寝てましたね」


「気にするな」


彼は目を逸らして寝室からキッチンへ向かった。

私も彼の後を追った。


「あの、すみません、一日中具合悪くて何もお食事用意してないんですが・・・」


彼は私に背中を向けて答えた。


「大丈夫だ、食事は済ませた、明日ちょっと出かけられるか」


彼は私に背を向けたまま問いかけた。

私は彼の前に回り、彼を見つめた。

何故だか、彼は目を逸らした、やっぱり私、嫌われちゃったんだ。


「具合悪いなら横になってても構わないぞ」


彼は私と目を合わそうとはしなかった。

あんなに優しかったのに、急にどうして?

私が役不足だから?契約違反だから?

心の中で彼を問いただした。

溢れる気持ちをしまっておくことが出来ない。

私は彼に気持ちをぶつけていた。


「私、契約解除されるんですか?」


彼は驚いた表情で私を見つめた。


「何言ってるんだ、契約解除はしない」


「それじゃあ、好きな人が出来たんですか?」


彼は私の問いかけに戸惑いを見せた。

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