第ニ章 届かない気持ち

第8話

私は振り向きもせず、会社を後にした。


あの忌まわしい過去から、未だに前へ進めない。


全ての男性が、私を騙そうとしていると思ってしまう。

しかも、真壁くんは私より十五歳も年下で、この会社の御曹司。


ゆくゆくはこの会社を継いで、社長になる人だ。


そんな人が、私みたいな冴えないアラフォーを好きになるわけがない。


遊びか賭けか、どっちにしても坊ちゃんの道楽だろう。


早く忘れよう、今ならダメージも少なくて済む。


次の日、朝、頭が痛くて起きられない。


私は会社を休むことにした。


「本郷部長、おはようございます、申し訳ありませんが、今日は頭痛が酷くてお休みを頂きたいのですが、よろしくお願いします」


「大丈夫か、ゆっくり休め、今日は水曜日だから出社は来週からでいいぞ」


「ありがとうございます、そうさせて頂きます」


ああ、良かった。


真壁くんを嫌いなわけじゃない、彼の遊びに付き合う余裕がないだけ。


その頃、経理部では本郷部長から、私が今週いっぱい休む事が知らされた。

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