第一章 忌わしい過去

第1話

えっ?キス?私キスしてるの?


「静香」


私にキスしている男性は、真壁不動産の御曹司、真壁翔。


「駄目!」


私は彼の胸を押して、突き放し、車から降りた。


「静香、待って」


私は一目散に駆け出した。


私は彼とは恋人でもなんでもない、昨日新入社員の挨拶後、今日歓迎会に行く事になった。


昨日、今日、ちょっと挨拶しただけなのに、キス?


しかも私は恋愛経験ゼロの型物アラフォー。


つまり、このなんだかわからない状態で、経験したキスがファーストキス。


相手がどう思ってくれているかもわからない、自分がどう思っているか、自問自答するもわかるわけがない。


だって、さっき「これからよろしくお願いします」「こちらこそ」そう言って挨拶を交わした相手だ。


アメリカじゃあるまいし、挨拶でキス?


いや、挨拶のキスだって、唇にしないでしょ。


しかも、彼は舌を入れてきた。


いくら経験無いと言っても、多少の知識はある。


挨拶で舌を入れてくるなんて、聞いたことがない。


もう、どうしよう。

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