第12話

「なあ、まどか、帰ってきてくれよ」


「彼女はどうしたの?」


「振られた、仕事辞めたって言ったら、出て行った」


新はしょんぼりした態度を見せた。


そこへ龍斗が入ってきた。


「まどか、もう行くぞ」


「社長」


「あんたは誰?」


「俺はまどかの上司だ」


「上司?それなら引っ込んでろよ、関係ないだろ」


新は龍斗を睨みつけた。


「まどか、なんか気分が悪くなってきた、帰るぞ」


「社長、あのう、私、もう少しここに……」


「馬鹿か、お前は、こいつは今無職だ、まどかの金目当てだぞ、いい加減目を覚ませ」


「でも……」


龍斗はまどかの腕を掴んで、歩き始めた。


「まどか、行かないでくれ」


新は弱々しい声を出して、まどかに訴えた。


「俺にはまどかしかいない」


まどかはまだ新を愛していた。


いや、正確には弱ってる男を放っておけないのだ。


女に弱い部分を見せて、頼る新。


女に弱い部分を見せられない、強がってしまう龍斗。


まどかはこの時、新を選んだ。

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