第21話

しかし相変わらず、彼は私を求めた。

仕事から戻ると、シャワーを浴びて、私を抱き寄せ唇を重ねる。

日を追うごとに彼のキスは濃厚になって行った。

彼の手は私の腰から太腿へ滑って行く。

意識が遠退きそうになりながら、彼の唇は私の首筋から胸へ移って行く。

えっどうしよう。どうしよう、どうすればいいの?

「あの、麻生さん、ごめんなさい」

もう、私ムードぶち壊しだよ。

彼は私の言葉で我に返ったのか、私から離れて大きく深呼吸した。

「ご飯食べようかな」

「いや、もう一回シャワー浴びてくる、気持ちクールダウンさせてくる」

彼は、暫くの間シャワー室から出てこなかった。

ずっとこのままってわけにいかないし、やっぱりちゃんと初めてだから、不安って気持ち話さないとだめだよね。

 彼がシャワー室から出てきた。

食事を済ませてから、覚悟を決めて私は話を切り出した。

「麻生さん、あの、お話あるのですけど」

「やっぱり、俺、嫌われた?」

彼は哀しそうな表情を浮かべた。

「違います」

私は慌てて否定した。

「あの、嫌なんじゃなくて初めてだから不安で、経験ないので、わたし・・・」

彼は不思議そうな表情で私を見つめた。

「だからどうしていいか分からなくて」

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