第一章 目覚めた愛

第1話

「若頭、大変です」


慌てて俺の元に駆けつけてきたのは、冨樫組の舎弟、ヤスシだ。


「うるせえよ、何が大変なんだ」


「マンションの前に女が倒れています、しかも熱があるみたいなんです」


俺はヤスシとマンションの前に向かった。


オートロックドアの前に、確かに女が倒れていた。


抱き上げると、身体が異常に熱かった。


「おい、ヤスシ、スポーツドリンクと頭を冷やすもの買ってこい」


「はい、かしこまりました」


ヤスシは俺のお守り役だ。


年は十九だが、俺よりしっかりしていて、頼りになる男だ。


俺は三年前から、生きてるのか、死んでるのかわからない人生を送っている。


冨樫組組長、つまり俺の親父は心配して、ヤスシを俺のお守り役につけた。


「自殺されては困るからな」


親父は俺にそう言った。


人間、そう簡単には死ねない、俺は実感した。

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