第143話
「健吾さん、どうして泣いてるんですか」
「いや、なんでもない」
健吾は由梨のおでこにキスを落とした。
その時、けたたましくインターホンが鳴った。
「組長、由梨さんがどうしても見つかりません」
裕也だった。
「しまった、裕也に連絡するの忘れた」
健吾はオートロックを解錠して裕也を招き入れた。
「あれ、由梨さん」
「すまん、裕也、昨日由梨を連れ戻して、お前に連絡忘れた」
「でも、よかったっす」
由梨は裕也をじっと見つめて健吾に聞いた。
「どなたですか」
この時、健吾は思った。
(俺のことだけ覚えて居てくれるんだ)
それで十分だ。
「こいつは裕也、俺の舎弟だ」
「初めまして、由梨です、よろしくお願いします」
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