第十四章 恐れていたこと

第107話

そんなある日、由梨はキッチンでコーヒーカップを落とした。


コーヒーカップは床に落ちて粉々に砕けた。


「大丈夫か、由梨」


由梨は健吾をじっと見つめていた。


「誰?」


健吾は由梨の言葉に愕然とした。


とうとう恐れていた日がやってきてしまった。


「痛い」


由梨はコーヒーカップのかけらで指を切ってしまった。


「由梨、消毒しよう」


健吾は由梨をリビングのソファに座らせて、救急箱を持ってきた。


しばらく一真のマンションに厄介になっていたが、健吾が歩けるようになったのをきっかけに、自分のマンションに移っていた。


現在、一真は山本組から抜けて、西園寺組若頭健吾の側近を努めている。


「由梨、指を見せてごらん」


由梨は目の前にいる男性が、誰だかわからなかった。


どうして自分がここにいるのかも……


「はい、消毒終了」


「ありがとうございました」

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