第92話

山本は由梨を殴ろうと手を上げた。


由梨は目を瞑って顔を背けた。


そこに一真が盾になって、山本に殴られた。


「一真、てめえ、俺に逆らうのか」


「決してそのようなことは、ただ、傷つけない方がよろしいかと」


「まっ、いいか、お楽しみは後でとっておくか、西園寺の目の前で殴る方が、あいつもダメージは大きいだろう」


一真は由梨に声をかけた。


「大丈夫ですか」


「あなたの方が大丈夫ですか」


「自分は慣れているので気にしないでください」


「私、どんな用でここにきたのでしょう」


「あなたは拉致されました」


由梨は倒れている裕也の存在を忘れた。


「あのう、この人はあなたのお知り合いの方ですか」


一真は由梨の言葉に驚いた。


(この女、何を言ってるんだ)


「西園寺組のやつですよね」


由梨はじっと裕也を見つめていた。

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