第84話

周りの景色がぐるぐると回って、どうすることも出来ずにいた。


(健吾さん、助けて)


健吾は裕也に連絡して由梨の様子を見てきてほしいと頼んだ。


「若頭、任しておいてください」


病院とマンションはそんなに遠くない。


歩いていける距離なのだが、今の由梨にとっては、大変なことだった。


裕也はすぐに由梨を見つけた。


頭を抱えて、しゃがみ込んでいる由梨に近づいた。


「姐さん、大丈夫ですか」


由梨はゆっくり顔を上げた。


「どなたですか」


衝撃的な由梨の言葉に、裕也は愕然とした。

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