第72話

でも今は違う。


健吾と身体を重ねて、いっぱい愛を注いでくれて、東條からも救い出してくれた。


この人なら信じられるって思えた。


借金返済の人生からも救い出してくれた。


今度は自分が健吾を支える番だと感じた。


そのためにも病気のことをはっきりさせなくては思ったのだ。


由梨は婚姻届にサインした。


「よし、これを提出して、病院へ殴り込みだ」


「健吾さんったら、違いますよ、先生の話を聞きに行くんです」


「そうか」


「健吾さん、真実を話すと誓ってください」


「わかった、でも、由梨のところに死神が迎えに来たら、俺が追い払ってやるから安心しろ」


「そうですね」


「一つ言っておく、俺の命もいつどうなるかわからねえ、俺の生きてる世界はそう言うところだ、だから覚悟だけはしておいてくれ」


由梨はすっかり忘れていた。


健吾は極道の世界の人間だ。


(健吾さんは、いつ、命を落とすかわからない、死と隣り合わせで生きてるんだ)


自分はなんて甘いんだと反省した。

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