第69話

病室に健吾だけが残された。


「あのう、由梨は?」


「由梨さんとご結婚の予定はおありですか」


「はい、俺は由梨と生涯一緒にいます」


「そうですか、はっきり申し上げます、由梨さんはアルツハイマー型認知症です」


「それって、年配の人の病気じゃ」


「若年性アルツハイマー型認知症です」


「あのう、いろんなことを忘れて行ってしまう、あの認知症ですか」


先生は頷いた。


健吾は愕然とした。


「諦めずに治療していきましょう」


健吾は病室を後にした。


(由梨が認知症?つまり俺のことも忘れるってことか)


待合室で、待っていた由梨が、駆け寄ってきた。


「健吾さん、先生のお話しはなんでしたか」


「うん、ちょっと疲れが出てるみたいだから、ゆっくり静養が大切だってよ」


「私がですか」


「そう、そう、由梨、今まで働きすぎだったからな」


由梨はやっぱり、一年前のことが関係あるのだと確信した。


まさか、自分が若年性アルツハイマー型認知症なんて考えも及ばなかった。

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