第56話

由梨は東條ホールディングスを辞める決心をした。


そして、東條との婚約も破棄しようと、辞表を持って社長室に向かった。


「失礼します」


由梨は深々とお辞儀をして、辞表を差し出した。


「由梨、どう言うことだ」


東條は想定していなかった現状に苛ついていた。


「社長、大変お世話になりました、そして、会長との契約も破棄させてください」


「会社を辞めて、借金はどうやって返すんだ、極道に払ってもらい、キャバクラででも働くのか」


「違います、ほかの就職先を探します」


由梨は社長に一礼して社長室を後にした。


(バカな、俺の元を離れて生きていけると思っているのか)


東條は握り拳を震わせて、怒りを露わにした。


その頃、由梨は早速アパートとアルバイト先を探していた。


(とりあえず、健吾さんに頂いたお金を使わせてもらおう、後でちゃんと返します)


封筒に入っているお金を握りしめて、健吾に感謝した。


由梨は健吾のマンションの近くのアパートを探した。


(健吾さんに会えないのは寂しいから……)


由梨は健吾に抱かれる喜びを忘れることは出来なかった。

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