第53話

車の中で、健吾は黙ったままだった。


由梨はどうしていいかわからなかった。


その時、渡辺の言葉を思い出した。


「一つ条件があります、若頭以外の男性と関係は持たないこと、その場合、


契約破棄になります、たとえフィアンセの間柄だとしても、よろしいですね」


(そうだ、私、契約破棄になるんだよね)


由梨は思い切って、健吾に言葉を発した。


「あのう、私、契約破棄されるんですよね」


「どうしてだ」


健吾はまっすぐ前を向いたままだった。


「だって、西園寺さん以外の男性と関係を持ったら契約破棄だって」


「契約破棄なんかしねえ、俺がいいって言ってるんだから気にするな、それにあいつとセックスしたのか」


「していません」


「そんなら問題ねえだろ」


由梨は東條の行動を信じられなかった。


(社長の元には帰れない、会社も辞めないとダメだよね)


由梨は途方に暮れていた。


その時、健吾が言葉を発した。

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