第40話

「すみません、社長が勝手にことを進めて、スマホも壊れてしまって、連絡出来なかったんです」


「俺との契約があるんだ、勝手なことしたら承知しねえぞ」


「そうですよね、社長の考えていることがわかりません、社長のフィアンセの立場が必要な時だけでいいとの約束だったんですが……」


「東條優馬は嫉妬したのか」


「絶対にありえません、私のことは眼中にはないんですから」

由梨はどうしていいのか、途方に暮れた。


「あのう、私、会社に戻らないと、仕事を辞めさせられると困りますから」


「俺の女としての手当があるだろう、東條のフィアンセ辞めろ」


「そう言うわけにはいきません」


「お前、本当に強情だな」


由梨はほほを膨らませて、怒った表情を見せた。


「父の借金はきちんと私が払いたいんです」


「俺が渡してる手当はお前の金だ、そこから借金を返せばいい話だろ」


「でも、私、西園寺さんの女としての役目を何も果たしていません、だから心苦しくて……」


由梨は俯いて涙が頬を流れた。


健吾は由梨の顔を覗き込み、涙を拭った。


「由梨、キスしてえ」


由梨は健吾の言葉に動揺を隠せなかった。


心臓の鼓動は早くなり、頬は真っ赤に染まった。

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