第24話

「由梨は銃で撃たれた俺を介抱してくれた」


「そうでしたか、ごめんなさい、全く覚えていません」


「由梨は口移しで俺に命の水を飲ませてくれたんだ」


「でも、そのことは感謝という気持ちですよね、生涯の愛を誓うほどの出来事でしょうか」


「俺は由梨に惚れた、惚れたことに理由はいらねえ」


「ですから、その感情は愛ではなくて、感謝です、ですからもう、

私の前には現れないでください」


「嫌だ、俺は由梨が欲しい」


この時由梨の口からとんでもない言葉を聞くことになろうとは思いもよらなかった。


「私を欲しいなら、相手になります、その代わりお金頂けますか」


健吾は由梨の言葉に呆然とした。


「俺はそんなことを言ってるんじゃねえ」


「だって、私を抱きたいんですよね」


由梨は上着を脱ぎ始めた。


ニットを脱いで、スカートも脱いだ。


恥ずかしくて堪らず、涙が溢れてきた。


健吾は自分の上着を由梨にかけて、ギュッと抱きしめた。


「わかった、無理すんなよ、俺は振られたって理解すりゃあいいんだな」


(違う、私は西園寺さんに甘えることは出来ない)


言葉とは裏腹に由梨は自分の手を健吾の背中に回してギュッと抱きしめた。


(由梨)


健吾は由梨の涙を手で拭った。


堪らず健吾は由梨にキスをした。


「俺は由梨を愛してる、確かにお前が欲しい、でもお前の身体だけじゃ嫌だ、

お前の心も欲しいんだ」


健吾はアパートを後にした。


外で待機していた渡辺は状況を察して、車のドアを開けた。


そして車は発進した。

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