第9話

「そろそろ奥の方が帰ってくる時間なので、入ってください」


「ああ、わかった」


健吾は由梨の部屋に入った。


「お食事召し上がりますか、肉じゃが」


「ああ、食う」


「それじゃあ、ちょっと待っていてください」


由梨は早速食事の支度を始めた。


健吾は由梨の背中から抱きしめた。


「急にそんなことをしないでください、ビックリします」


健吾は由梨の耳元で囁いた。


「お前が欲しい」


由梨ははじめての経験に戸惑った。


男性から告白などされたことがない。


由梨は恋愛経験がないのだ、必死に借金を返すため、一生懸命働いた。


友達と遊びに行くこともしない、男性とデートだってしたことなどなかった。


だから、抱きしめられたりすると、どうしていいのかわからない。


(この人のことは何も知らない、それなのに、私は自分の部屋に招いて、


告白されて、どうしよう)

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