第69話

「美希、前に俺が言ったこと覚えてるか、俺だけ見てろ、俺だけ信じろ、そして俺に甘えろと」


「覚えています、でも私、蓮さんに相応しくないんです」


「美希が俺に相応しいかは俺が決める」


「蓮さん」


「美希は俺が認めた女だ、鏑木蓮の妻はお前しかいない、美希が俺の側にいるべきかどうかは俺が決める、だから俺の許可無しに勝手なことするなわかったか」


「はい、わかりました」


「よし、いい子だ」


そう言って彼は私の頭をポンポンした。


美希には申し訳ないが、これ以上危険な目にあわすわけにはいかない。


俺がいつも側にいてやればいいんだろうが、今はそう言うわけにもいかない。


美希、我慢してくれ。


美希はあいつに酷い目に遭ったのだろう。


絶対に許せない。


十年前に酷い言葉を浴びせて、自分からふったくせに、今更手放した事が惜しくなったんだろう。


力づくで自分のものにしようとしたに違いない。


美希は精一杯の抵抗を試みたが、無駄に終わったのだろう。


くそっ!

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