第8話

「ああ」


「それで会えたのか」


「会えた、俺、彼女に惚れた、結婚する」


望月は絶句した。


「おい、話が飛躍しすぎだろう、彼女はお前を俺だと思ってるんだよな」


「そこまで、印象づけていないよ」


「わからないぜ、望月さんって今頃うっとりして、俺の名前を連呼してるかもよ」


俺は望月の胸ぐらを掴み、拳を上げた。


「冗談だよ、怒るなよ」


「彼女のことで冗談は俺には通用しない」


「わかった、わかった、で?一目惚れか」


「ああ、そうだ、まず優しい笑顔、それから三十五とは思えない可愛らしさ、控えめな雰囲気、目の前にいて、抱きしめたくなった」


俺は興奮して声が上擦った。


「蓮、落ち着け、そんなに愛らしいなら彼氏いるだろう、人妻かもしれない、指輪を確認したか?」


「いや、そこまで気が回らなかった」


そうだよな、俺がこれほど入れ込んでるなら、他の男が放っておくはずがないな。


でも、俺の気持ちの燃え上がる炎はますます勢いを増していった。


まず親父の会社の採用試験を受けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る