第7話

俺は望月の名を借り、思い切って彼女の前に姿を現した。


「失礼ですが、藤城美希さんですよね」


彼女は振り向くと俺の顔を見て、軽く会釈をした。


「あのう、大変失礼ですが、どちらの望月さんでしょうか」


「あ、すみません、人違いでした」


「いえ、大丈夫ですよ」


俺はじっと彼女を見つめた。


彼女は恥ずかしそうに俯いた。


「あのう、この会社に藤城美希は私一人ですが、似た名前の方ならいますので、お呼びしましょうか」


そう言ってビルへ俺を誘導しようとした。


俺は慌てて「大丈夫です、俺の勘違いでした、失礼します」と言ってその場を後にした。


彼女はいつまでも俺の後ろ姿を見送ってくれていた。


その彼女の姿がずっと脳裏から離れなかった。



俺は望月を呼び出した。


「彼女に会った」


「えっ、親父さんの言いつけ破ったのか」


「いや、お前の名前を借りた」


「はあ?どう言う事だ」


望月はムッとした表情になった。


「お前の名前で彼女を呼び出した」


「親父さんの会社まで行ったのか」

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