第4話「真実」
いやー、素晴らしかった。
「何がどう素晴らしかったのか、詳細に語ってはいけない」と俺の「超直感」が告げているせいで、ここで語ることができないのは残念だが、とにかく素晴らしかった。
今思い出しただけでも涎が止まらない。
さて、英気も養ったところで、姫たちの救出行っちゃいますか。
無敵要塞シラカワまでは新幹線を使えばすぐだ。俺は切符を買い、意気揚々と列車に乗り込んだ。
***
シラカワの駅で降りると、目の前には大きな城塞がそびえ立っている。これこそ無敵要塞シラカワだ。
正門には門番の魔族がいるな。村にちょっかいをかけてくるような雑魚どもと違い、かなり強力そうだ……。かくなる上は……。
「すみませーん。私、王都トキオで勇者を務めております、ユーリ=ハサマールという者ですー。そちらにイサベラさんいらっしゃいますかー」
俺は門番の前でお辞儀をしながら、こんなときのために用意しておいた名刺を差し出す。
「あー、勇者さんね。イサベラなら今7階の第2会議室にいると思いますよ」
俺の名刺を確認すると、魔族はあっさりと俺を通してくれた。巨大な自動ドアが開き、俺は中へと進む。
門番は、イサベラは7階の第2会議室にいると言ってたな。俺はエレベーターに乗り込み、7のスイッチを押す。
エレベーターを降りると目の前に「第2会議室」と書かれた大きなドアが現れる。俺はその重いドアを押し開け、中へと踏み込んでいった。
「あら? 貴方誰かしら?」
目の前に現れたのは、胸元や腹部が大胆に露出した真紅のローブに身を包んだ魔族の女性。とはいえ外見は人間と変わりない。
コイツが「劫火のイサベラ」か!?
イサベラからの質問には敢えて何も答えず、俺は武器を手に取り身構える。
「いきなり現れたかと思ったらいきなり臨戦態勢って……。私何かしたかしら?」
イサベラは呆れたような目つきで俺を見て、そう言った。
「何かしたかだと!? 白々しい! 姫たちを返せ!」
白々しいことを言うやつだ。俺は声を大にして奴に怒鳴りかかる。
するとイサベラは、まるで言われて初めて何かを思い出したかのような表情をした。
「ああ……? この前うちに来た姉妹のことね?」
どこまでも白々しい女だ。俺はこみ上げる怒りを抑えきれずに大声を上げる。
「『うちに来た』だと!? ふざけるな! 貴様らが拐ったんじゃないか!?」
「拐った……? ああ、王都ではそういうことになってるのね……?」
イサベラは一瞬不思議そうな表情をした後、不敵な笑みを浮かべる。
「仕方ないわね。何も知らない勇者様のために教えてあげるわ」
何も知らないだと? どういうことだ?
混乱している俺をよそに、次の瞬間、イサベラは衝撃の一言を言い放った。
「あの娘たちはね。自らの意思でここに来たのよ」
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