短編

カいになる

██殺し

人を殺してしまった

勢いに任せてしまった

あの絞めた感覚も、苦しそうな声も顔もまだ忘れられない

死体は海に投げた。しかしすぐ見つかるだろうと思っていた、しかし何日たっても何ヶ月たっても。

何年、何十年、何百年たっても骨の1つすら見つからない。ましてやあいつが居ないということに誰も気が付か無い。


ならば夢なのだろうか

それだとありがたいが、嫌に鮮明すぎる。

人は最初に声を、そして顔をそして思い出を忘れると聞いた。

しかしどうだ?私は何も忘れていない。

苦しそうな声、顔、そして殺している最中の思い出。

すべて先程起きたことのように思い出せる。

ならば現実に、実際にあった事なのか、と言われれば難しい。

今思えばあんなわかりやすいとこに投げた死体が見つからないのもおかしい。骨1つ…もしくは靴などの衣服くらいは見つかってもおかしくないと思うのだ。

ならば何故見つからない?あれはなんだったんだ?

そういえば、彼との思い出がほとんど無い

なんで殺すに至ったんだ?

彼との関係性は?

彼の名前は?年齢は?


男だったか?女じゃ無かったか?

いつ、殺した?




最近夢を見る

あいつが、私を見ている夢を。虚ろな目で恨めしそうに、見下している夢を見る。

毎日見るせいでまったく寝れない、最近寝不足だと思う。


こんなんだからいつか死んでしまうのでは無いのか、とも思ってしまう。

まあ、まだまだ若いからまだ殺されないかぎりは死なないと思うが。

明後日はあいつと一緒に映画を見る約束をした。なんだったけな「███」…あまり思い出せないな。

ああ、楽しみだ。


また夢を見た。

今日も同じ夢だ。夢を見てる時は自覚出来ないのが悔やまれる。今度夢を見たら殺してやる。


今日

はあいつが夢に出てきた。同じ目をしてきやがった、幸い今回は夢とわかった、だから近くにあったコードで首を絞めてやった。驚いた顔をしていた、ざまあみろ。

死体は海に捨てた。

今回も見つからないだろう。


見つかった、なんで?

夢のはずだろう?夢だから私の中での話だ。

大丈夫だ、バレない。だってこれは夢だから。

最近ずっと変な夢を見る。

あいつの家に行って、映画を見て、雑談して、そして私が夢の事を話したら、あいつが急に怒り出して、私を殴って、蹴った。だから殺した。首を絞めて、もがいて、動きが弱くなって死んだあいつを、スーツケースに詰めて、海に捨てた。


夢だから私が殺したとバレないはずだ、

何日たっても、何ヶ月たっても、何年たっても、何十年たっても、何百年たっても。

なぜならこれは夢だから。

悪い夢だから。自業自得なあいつが悪いんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

短編 カいになる @kaininaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ