Masquerade・Suicide
@yurara34
第1話
毎日毎日、寝て起きて食べて寝て起きて食べての繰り返し。たまに働きに出る。単発のバイト。楽なヤツに的を絞って楽に金を稼ぐ。
ギャレット・ノースモア、24歳、独身。定職には就いていない。
カルガタード共和国の外れの村で一人暮らしをしている俺は、生まれてこの方ずっと田舎に住んでいる。城のある方面になんて行ったことは無い。定職に就いて、お金を稼いで、城下町に住めるような経済力が身についたらそこに住んでみたい気持ちもあるが、今の俺にはそんなこと出来ない。
ベットからゆっくりと起き上がり、だるいと思いながらもカーテンを開ける。日光が目に直接届いて眩しい。目をぎゅっと閉じた。
朝はあまり好きではない。綺麗な朝日で浄化されそうな気分になるから。俺なんかには薄暗い場所がお似合いだ。
そんなことを考えながら、頭をぼりぼりと掻いて洗面所へと向かう。
ボサボサで手入れのなっていない伸びきった肩までの髪。それに適当に手ぐしを通して横でまとめる。
何も無い日でも、こうやっていつも通りのルーティーンを行うことでなんとなくちゃんと生きてるって感じがする。
レコードプレイヤーの蓋を開ける。適当に選んだレコードを入れて蓋を閉めて、机に突っ伏して音楽を聴く。こうしていると暇を潰せるから良い。
――コンコン
玄関からノック音がする。
思い当たるのは一人しかいない。
「入っていいかー?」
「いいよ。」
目の前に現れたのは銀髪をオールバックにした少し厳つい男、ニック・エルズバーグ。俺の唯一の友達だ。
なんで友達になったのかは思い出せないが、この村に来てから執拗に話しかけられたから、なんとなく付き合ってやっているみたいなもんだ。
でもこいつは本当に良い奴で、俺の家に急に来て食事を作り置きしてくれたり、あまり外に出たりしない俺を外に連れ出してくれる。「お前、またそのボロレコードプレイヤーで音楽聴いてるのかよ……さすがにそろそろ買い換えろって。」
「ボロだからいいんだろ……普通のレコードプレイヤーで聴くより音が古臭くて好きなんだよ。」
いつもの会話だ。俺はこの音が好きで、このプレイヤーで聴いてるのにいつも文句を言ってくる。確かに……見た目は凄くボロボロだが。それも趣があっていいだろう。
「お前、ちょっと変わってるところあるよな。」
「そりゃどーも。俺にとっては褒め言葉だ。」
「褒めてるつもりで言ってるんじゃないけどな……っと、今日はこんなことを言いに来たんじゃない。」
今日は何の用だろう。一昨日は村の西にあるレストランに食べに行こうと誘われて行った。その前は服を選んで欲しいと、古着屋に連れていかれた。
「なあ、俺と一緒に、城下町で暮らさないか?」
「……え?」
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