3・あかね、遠い国の王子とお見合いする

第3話

ある日の土曜日。

「大変! 急がなくっちゃ!」

 あかねは、午後から始まるサスペンスドラマを観ていたせいで、バイオリン教室に遅刻しそうなっていた。

「はあはあ! すいません、すいません!」

 人通りの多い街中を走っていた。

「きゃっ!」

 誰かとぶつかり、しりもちをついた。

「いたた……。もう! 前見て歩きなさいよね!」

 怒った。

「いたた……」

「ふんっ。謝りもしないなんて、遅刻したらあんたのせいだかんね?」

 立ち上がり、あかねは金髪の少年をにらんだ。

「!」

 少年は、顔を赤らめて、あかねを見つめた。あかねは走り去っていった。

「と、ときめいた!」

 少年は胸をときめかせた。


 夕方。あかねは無事にバイオリンの稽古をおえ、帰路を辿っていた。

「アイスでも買って帰ろうかなあ」

 つぶやいた時だった。

「アイスでもなんでも手に入れてあげるよ」

「へ?」

 誰かが声をかけてきた。

「また会ったね。愛しの人」

 金髪の少年がほほ笑んでいた。

「え?」

 当惑するあかね。

「僕の未来の花嫁。さ、参りましょう。我が国、カスタード王国へ!」

 しゃがみ、手を差し伸べた。少年の後ろには、スーツを着た黒服が複数人立っていた。

「ひっ! た、助けてーっ!」

 あかねは逃げた。

「はあはあ!」

 走って電柱のそばをすれ違う時、

「ひゃーっ!」

 黒服が三人、電柱の影から現れて、つかまりそうになった。

「はあはあ!」

 マンホールに足が踏みそうになって、

「ひゃーっ!」

 マンホールの中から黒服が三人飛び出してきた。

「はあはあ! ちょっと借りるわよ!」

 通りすがりの男の子の自転車をかっさらい、走るあかね。

「ひゃーっ!」

 黒服たちがキックボードで追いかけてきた。

「待ってくれ! 僕は君に恋をしてしまったんだ!」

 少年は白馬に乗って追いかけてきた。

「なんですとー!?」

 目玉が飛び出るほど驚がくした。

「助けて~!!」

 あかねの悲鳴が住宅街の中にこだました。


 金山宅。

「ほーら。おやつだぞ」

 ゆうきが庭で、まなみと中身が入れ替わった野良ネコにビスケットをあげていた。あれから野良ネコは、まいやゆうきになついたらしく、時々家まで足を運んでくることがある。

「やれやれ。こないだたまたま来た時に、あんたがシーチキンの缶まるごとあげたせいで、ここがエサやり場になってるじゃないのよ」

 まいが呆れた。

「いいじゃん。ネコはかわいいんだしさ」

「でも、野良ネコはちゃんと保健所に連れて行ってあげないといけないのよ?」

「助けてー!!」

「ゆうき、なんか誰か助けを呼んでない?」

「そう? 母さんがゴキブリでも見つけたんじゃないの?」

「お母さんはゴキブリごときでわめく人じゃないわ」

 そこへ。

「助けてーっ!!」

 あかねが金山宅の塀を乗り越えて、自転車でやってきた。

「うわあああ!!」

 叫ぶまいとゆうき。

「ほげっ!」

 あかねは、自転車ごと顔から庭にダイブした。

「あ、あかねちゃん? どうしたの?」

 呆然とするまい。

「きゅ~」

 目を回しているあかね。

「あかね、お前にそんな特技があったとは……」

 感心して言葉も出ない様子のゆうき。

「いや、感心するな」

 まいがツッコミをいれると、

「愛しの花嫁!」

 白馬に乗った少年が、塀を乗り越え、現れた。

「だ、誰ー!?」

 驚くまいとゆうき。少年は答えた。

「僕はカスタード王国からやってきた王子、ミルキーだ!」


 まいは黒服も含め、全員中に上げて、お茶とお菓子を用意した。

「で、改めて自己紹介させてもらうわよ?」

 あかねはにらみ目になりがら言った。

「王子に向かってなんて口を!」

 黒服が全員で同じことを口にすると、

「いいんだそれで。ああ、その蔑むような目、すばらしい……」

 キュンとなる胸を自分の腕で抱きしめた。

「はあ?」

 唖然とするまい、ゆうき、あかね。

「改めて。僕はカスタード王国の王子、ミルキー。この度、ホレてしまった君を花嫁として向かい入れるため、あいさつに伺った。よろしくね!」

 ウインクした。

「い、いや……」

 当惑するあかね。

「君はなんていうんだい? 名前を聞かせておくれ」

 と言って、

「蔑んだ目で!」

 目を輝かせた。

「なぜ?」

 唖然とするあかね。

「あ、あたしは西野あかね。十一歳の小学六年生だから、その、花嫁なんて無理よ」

「それが、我が国カスタード王国では、プチ成人を迎えた者は、結婚できる法律になっているのだ」

「へえ?」

「ていうか、カスタード王国ってなんだよ! なんか、うんこくさいぞ!」

 場が白けた。

「ゆうき、それを言うならうさんくさい!」

 まいが訂正した。

「あ、そっか。うさんくさいぞ!」

「言い換えんでいい……」

 呆れるまい。

「カスタード王国は、だいたいこの辺にあるところさ」

 地図を見せた。イギリスにあるらしい。

「そうなのね。じゃあ、うちの知り合いのいとこにイギリスのハーフがいるので、実際にあるかどうか確認してみるわ」

 まいは、スマホでアリスにメールを送った。

「あ、来た」

「なんて来た?」

 あかねは、まいのスマホを覗いた。

「あるってさ」

 納得するまいとあかね。

「あるの!?」

 驚くまいとあかね。

「ふふっ」

 さわやかにほほ笑むミルキー。

「あかね姫」

 あかねにそっと手を触れるミルキー。

「姫!?」

「婚約が成立した暁には、君はカスタード王国の王妃として迎え入れたい」

「え、ええ?」

「いいね?」

「ちょっと待てよ!」

 ゆうきは、あかねの手に触れるミルキーの手をパンと叩き、離した。

「君! 王子の手になんてことを!」

 黒服が全員同じことを注意すると、

「いいんだ」

 ミルキーが制した。

「あかねは俺の幼馴染みだ。悪いけど、カスタード王国なんて聞いたことのないとこに連れて行く道理はねえよ」

「ゆ、ゆうき?」

 ポッと顔を赤らめるあかね。

「そんなことして、俺誰に宿題写させてもらえばいいんだ!」

 場が白けた。

「ああ、そういうことね……」

 怒りで震えるあかね。

「あんたはあたしのことを、ただの宿題写しとしか思ってないようね?」

 ゆうきの胸倉を掴み、鬼の形相でにらんだ。

「そ、そんなことありませんよっ? やだなあ!」

 あわてるゆうき。

「やれやれ……」

 肩をすくめるまい。

「ぐぬぬ~! おいゆうき!」

 ミルキーが立ち上がり、怒鳴った。

「へ?」

 胸倉を掴まれたまま、顔を向けるゆうき。

「おっと失礼。ゆうき君と言ったね。君、僕と勝負をしないか? 勝てばあかね姫のことはきれいさっぱりあきらめる。だが君が負ければ、あかね姫はカスタード王国の王妃として迎え入れることになる!」

「な、なんか急に展開変わりましたね」

 ゆうきは当惑した。

「だって、僕なんてまだ、姫にそんな風ににらまれたことないのに! しかも君は幼馴染みだとっ? くそっくそっくそ~!」

 地団駄を踏んだ。

「王子」

 黒服が一人、彼の耳元に呼びかけた。

「はっ! おっと失礼」

 姿勢を正し、言った。

「勝負の方法は簡単!」

「はい! 俺、ゲームいっぱいあるぞ? それか、腕相撲するか? それとも、かくれんぼで何時間見つからないか勝負するか?」

 ゆうきが提案するが、

「これだから庶民はつまらない」

 肩をすくめるミルキー。

「お前庶民に言ってはならないことを!」

 イライラして殴りかかりそうになるゆうきを押さえるまい。

「勝負の方法はお見合いデートだ。僕と君、どちらがあかね姫をキュンとさせるか、競い合おうじゃないか!」

「え、ええ?」

 困惑するゆうきとあかね。

「ふ、二人ともそんな関係で幼馴染みやってきたんじゃないのよ? 無理難題押し付けてこないで!」

 まいが反対した。

「ふん。王子の命令は絶対だよ、お嬢さん」

「あんたはまだ子どもでしょ! 調子いいこと言うんじゃないわよ!」

「これを見てもまだ大口叩けるのかい?」

 ミルキーは、五枚のブラックカードを見せた。

「!?」

 まい、ゆうき、あかねは呆然とし、掲げられた五枚のブラックカードに釘付けになった。

「さあ、始めようか」

 勝負がスタートした。


 一番手はミルキー。金山宅の前に、馬車を用意していた。

「なにかしらこれ?」

 買い物から帰ってきたさくらが、停まっている馬車を目を丸くして見つめている。

「きれいだよ、あかね姫!」

「う、うん……」

 玄関に出てきたミルキーとあかね。あかねは、ミルキーに頼まれて、白いドレスを身にまとっていた。

「は、恥ずかしい……」

「そんなに顔を赤らめないで? でも、赤らむ君もかわいい」

 あかねのあごに手を添えた。あごクイだ。

「やめて! キモイ!」

 あごクイをする手をパンと叩いて払った。

「ああ、いいねえ!」

 胸をときめかせるミルキー。

「さあ、発車してくれ!」

 ミルキーとあかねが馬車に乗り込むと、黒服が馬を動かした。

「もしかしてなにかの撮影? でも、ドレスの子、あかねちゃんにそっくりだったけど」

 カメラがいないかあちこち見て回るさくら。

「お母さんおかえり」

「まい、ただいま。ねえ、さっきの馬車って、撮影?」

「違うわ」

「ウッソー! 撮影以外になにがあるのよ?」

 まいは答えた。

「新しいゆうきのライバル到来ってとこかしら?」


 ミルキーとあかねを乗せた馬車は、街を歩く人々に釘付けだった。

「な、なんか道行く人たちみんな見てくるよ?」

「はははっ。僕たちがうらやましいのさ」

 と言って、あかねの肩を寄せるミルキー。

「ね?」

「離れて」

 彼から体を離した。

「そろそろ着く頃だね」

 と、ミルキー。馬車が向かっている先は、巷で有名な、セレブしか来ないと言われている、高級フレンチレストラン。七本木ヒルズの十五階に所在していた。

 ミルキーとあかねは、予約していた窓際の席に着いた。

「うわあ! あたし、高いとこ好きなの」

「ノーノー」

「へ?」

「あかね姫。これから王妃となられるのだから、お姫様のようにしゃべらなくちゃ」

「お姫様? おほほとかですわよとか?」

「いっか。ゆっくり覚えていけばいいよ」

「にしても、黒服がいるのは落ち着かないわねえ」

 黒服たちは、あかねたちのいる席の真後ろの席から様子を伺っていた。

「しかたないよ。僕は、生まれた時から王子として彼らにボディーガードを任せているんだからね。あかね姫も、直に慣れるよ」

 ウインクした。

「まあいいわ。とりあえず、なに注文しようかなあ」

 あかねは、メニューを見た。

「へえ?」

 なにがなんだかさっぱりだった。どれも見たことのないメニューばかりだった。

「フレンチは初めて? 僕がおすすめを教えるよ」

 ミルキーは、あかねの隣に来て、メニュー表を覗いた。

「えーっとね。ポトフなんてどうかな? お野菜がたっぷり入っていて、お母様によく食べさせてもらっていたんだ」

「じ、じゃあそれでいいわよ」

 ウエイターがやってきた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「はえ~」

 あかねは、初めて見るセレブなお店のウエイターに目を丸くした。

「ポトフ二つをすぐに用意するんだ」

 ミルキーは指示。

「かしこまりました」

 ウエイターは承知すると、去っていった。

 あかねたちのいるテーブル付近の窓ガラスに、小さなセミのようなものが止まった。

「あかねちゃん、人生で二度も来れないようなところに来たわねえ」

 モニターを見ながら、まいがつぶやいた。

「あかねだけずるいぞ! あいつめ~!」

 ゆうきがイライラした。

「にしても、セミ型監視カメラがここで役に立つとはねえ」

 りかが鼻を天狗にした。まいとゆうきはあかねの様子が気になり、りかに頼んで様子を伺える発明はないか頼んでみたところ、偶然にもセミ型監視カメラという特殊なカメラを発明したらしく、すぐに馬車のあとをつけ、七本木ヒルズ近くの噴水広場で様子を見ていた。

「ゆうき。彼はブラックカードを五枚も持つお金持ち。あんた、お見合いデートでなにをするの?」

「えーっと……」

「ブラックカード五枚? 信じられない……」

 呆然とするりか。

「それが、ほんとのことなのよ」

「あたしだって、まだ一般人が持つクレカなのよ!? 口座何個も掛け持ちしてんのにさあ!」

「そんな声を上げられても……」

「いっそ、あいつと結婚すればよくないか?」

「え?」

 という声を同時に上げるまいとりか。

「だって、あかねは金持ちになるんだろ? そうすれば、俺たちも友達というよしみで少しばかり恵んでくれたりしないかな。だってよ、金持ちになれば、電車旅好きなだけし放題じゃん! 学校も行かなくて済むし、死ぬまで遊んで暮らせるんだよー?」

 ゆうきはごきげんな調子で答えた。

 しかし、まいにはビンタをされてしまった。

「ね、姉ちゃん?」

 いきなり叩かれて当惑した。

「バカ!」

「な、なんで叩くんだよ! 姉ちゃんこそ、貧乏よりも金持ちになって、一生遊んで暮らしたいだろ? それなのに叩くなんてどうかしてる!」

「そうだけど! でも……」

「おほん」

 りかが咳込み、言った。

「ゆうき君は、今が楽しくない?」

「え?」

「ゆうき君はさ、ほんとにあかねちゃんにお金持ちになってほしいと思ってる?」

「それは、そうだろ?」

「そう。じゃあさ、今までお金持ちじゃなくても楽しかったこと、思い出してごらん」

「へえ?」

 ゆうきは言われた通り、思い返してみた。それは保育園まで遡った。あかねと公園のブランコで遊んだこと、初めてバイオリンを聴いたこと、小学校に入学式であかねが泣いてしまい、必死で笑わそうとしたこと、三年生の時の遠足で、こっそりとお菓子を盗んでどつかれたこと、五年生の時に行った市民ホールのバイオリンコンサートで居眠りしたこと、そして、六年生。最後のコンサートで金賞を受賞した時の、笑顔。

「どう? つまらなかった?」

 りかはもう一度問いかけた。

「ううん」

 ゆうきは首を横に振った。

「あたしも妹のるかも今じゃバリバリ稼いでる身だからさ、わかるけど。お金持ちになるとさ、いろいろ忙しくて、実は遊ぶ余裕なんてないんだよね」

「ほんと?」

「うん。だってさ、お金がバリバリもらえるってことは、それだけ求めてくれる人がいるわけで、その何千人、いや何千万人以上の人たちのために時間を費やさなくちゃいけない。言っちゃえば、ある程度の収入のほうが、楽して生きていけるよ」

「そういうもんなのかなあ?」

 ゆうきはまだ納得していない様子だ。

「ゆうき」

 まいが声をかけた。

「私が怒ったのはね、あかねちゃんを好きでもないあいつと婚約成立することを考えていないことになんだよ? あんただって、石田君と無理やり結婚させられたらいやでしょ」

「そんなのやだ!」

 断言した。

「あかねちゃんもいっしょなのよ。だから、絶対に婚約させちゃダメよ? 例え、相手がカスタードだか生クリームだかの王子だとしてもね!」

 ゆうきは左手でグッジョブをして見せた。


 ミルキーとあかねのデートがおわった。

「おやおやゆうき君。レストランの前で待っていてくれたのかい」

 ほほ笑むミルキー。

「おう」

「君の番だ。最後の仲良しごっこだと思って、楽しみたまえ」

 あかねから離れた。

「……」

 ゆうきとあかね、二人きりになった。

「あ、えっと……」

 なぜか緊張するゆうきとあかね。同時に声をかけて、照れた。

「あ、あかね? お前、見違えたなあ」

「や、やめて? これ、恥ずかしいんだから」

「う、うん」

 二人の様子を噴水の影から見守るまいとりか。

「あんなゆうきとあかねちゃん、初めて見るわ。いつもなら、気さくなのに」

「まいちゃん。あたし、ゆうき君があかねちゃんにどつかれてるイメージしかない」

 モジモジして、お互いの顔を見ようとしないゆうきとあかね。

「くっそ~! まるで本当のカップルじゃないか。おい黒服!」

 怒ったミルキーが、指示した。

「はい!」

 黒服全員が気をつけの姿勢で返事をした。

「今すぐやめさせるんだ。もうわかってることだろ? 僕と彼女はお似合いさ。だから、やめさせるんだ」

「は、はあ」

 困惑したが、やめさせるため、二人のもとへ向かおうとした。

「あかね!」

 ゆうきが呼んだ。

「恥ずかしいんだろその格好。だったら、今から走って行くぞ?」

「ど、どこへ?」

「ほら!」

 ゆうきは走った。

「え、ええ?」

 当惑した。

「ま、待ってよー!」

 追いかけた。

「僕たちも追いかけるぞ!」

 ミルキーは馬車に乗り込み、黒服はすぐに馬に乗り込み、動かした。

「ゆうき、どこに行くのかしら?」

 まいとりかも追いかけた。

 ゆうきとあかねは街を抜け、森を抜け、走った。やがて、低山を登った。

「はあはあ!」

 あかねが息を切らした。

「きゃっ!」

 ドレスのスカートを踏んでしまい、こけた。

「あかね!」

 振り向くゆうき。

「大丈夫よこんなの」

 すぐに立ち上がった。

「来いよ!」

 ほほ笑み、ゆうきは走った。

 約ニ十分、低山を登った先にあったのは。

「ここかあ!」

 頂上。あかねは納得した。ゆうきのお気に入りスポットだった。

「はあ! 頂上だあ!」

 と、声を上げ、ゆうきは草むらの上に寝転んだ。

「どうしてこんなところに? 人がいないから?」

 あかねに問われ、答えた。

「あかね。お前、今楽しいか?」

「へ?」

「その、なんだ? お金持ちと結婚していい暮らしがしたい? 俺は、今が楽しければ、どうせ好きでもないやつと結婚するよりマシだと思うけど?」

 と言って、そっぽを向いた。

「ふふっ」

 あかねは笑った。

「あーあ!」

 あかねもゆうきの隣に寝転んだ。

「早くこんなの脱ぎ捨てたいなあ」

「ぐぬぬ~! ゆうきめ!」

 怒りに震え、身を乗り出したミルキー。しかし、黒服に肩を触れられた。彼は首を横に振っていた。

「あいつなりにがんばったのねえ」

「なるほどねえ」

 まいとりかは、木陰で座り込んで、まったりしていた。

 こうして、あかねは無事カスタード王国に行かずに済んだ。ミルキーと黒服はなにも言わずにいなくなっていた。散々やられたため、まいたちは二度と会いたいとは思っていなかった。

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