第5話
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アリスはお屋敷に住んでいました。赤い屋根が特徴的でした。ちょうど夕飯時でした。
「げ〜。またシイタケ出てる。もう、シイタケ出すなって言ったじゃん」
アリスは夕飯に出たソテーに、シイタケが出たので文句をたらしました。シイタケを皿の端に避けました。
「こらアリス! 食べ物は粗末にしてはいけません」
隣にいるお姉さんが注意しました。
「じゃあお姉ちゃん食べてよ。ほら、あーん」
「なっ!?」
お姉さんは心の中で、
(アリスと間接キスアリスと間接キスアリスと間接キッス〜♡)
喜んでいました。でも、
「こら! お行儀よくしなさい! 自分で食べるのよ!」
強引にアリスの口元に、シイタケをのせたスプーンを持っていきました。
「なによケチ〜!」
アリスは必死で抵抗しました。
(アリスと間接キスしたい〜!いっそ口移しでも♡)
と、デレデレした時。
ベチョっとお姉さんの服に、アリスのシイタケとフォークがつきました。
「あたし知ーらないっと」
「ア〜リ〜ス〜!!」
怒るお姉さん。アリスはギョッとして、逃げました。
「待ちなさーい!」
お姉さんは追いかけました。リビングで、二人は追いかけっこをしました。
バンッとテーブルが叩かれました。アリスとお姉さんは追いかけっこを止めました。お母さんが、ものすごい形相で、怒りのオーラを放っているではありませんか。恐怖で震えたアリスとお姉さん。
「すす、すみませんお母様!!」
お姉さんは台所にかけ込んで、ドレスについた汚れを取りにいきました。
「ごめんママ……」
アリスはテーブルに戻りました。
さんざんな目にあったあと、アリスは部屋で宿題をしていました。
「あーあ。算数ドリルってむずかしいなあ。ねむいなあ。そうだ、サボっちゃおーっと」
勉強机から離れようとした時でした。
「失礼します」
お姉さんが入ってきました。アリスは驚いて、イスから転げ落ちました。
「大丈夫?」
「びっくりしただけ……」
アリスはよろよろと立ち上がりました。
「聞こえてたわよ。あんた宿題サボろうとしたでしょ?」
「なによ。単位だけ取ればいい大学生には、宿題ないからわからないでしょうね!」
「なっ。お姉ちゃんにだって宿題くらいあります!」
「ふーん。ゲームしよ」
アリスはゲーム機を出しました。
そのゲーム機を、お姉さんが取り上げました。
「あーっ! ケチーッ!」
「宿題をしなさい!」
「なによ! ママでもないのにあれこれ言わないで!」
「これも一人前のお嬢様になるためです! 今のあなたのままじゃ、到底不可能ね」
「いいもーんお嬢様にならなくたって。あたしはあたしで将来やりたいことやるもーん」
「そうやって言えるのも今のうちよ? 大人になれば、やりたいことよりも、生きることが先決になるのだわ」
「まだ大学生のくせして言うか」
お姉さんムッとして、
「こいつ〜!」
「ところでさ、お姉ちゃんに質問があるんだけど」
「え?」
お姉さんは心の中で、
(なに、急に? もしかして、もしかしてもしかしてだけど!)
それは、天使のようなほほ笑みをしたアリスが、
『ねえ。お姉ちゃんは、あたしのこと、どれくらい好き? 態度で示して♡』
と、聞くものでした。お姉さんはデレデレしました。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」
ハッとするお姉さん。
「おほん。なにかしら? 明日の朝ご飯とか、おやつの質問は受けつけないわよ?」
「いや、そんなんじゃなくてさ。クラスメートの白雪のことなんだけど」
「白雪? ああ、白雪姫のことね。隣町にお城をかまえている」
心の中では、
(あの雪のように肌が白くて、髪は黒くつややか、くちびるはいちごのようにぷりぷりな、かわいいかわいい天使ちゃんね。ぐひひ!)
と、ニヤニヤしていました。
「なんか最近チャットってのにはまってるみたいで」
「チャット? え、あの子まだあんたと同い年でしょ? 小学生がそんなものやるの?」
「なんかね、自分の写真上げて、世界で一番美しい姫だよって、言われたんだって。チャットで」
「今時は進んでるわねえ」
「それでいつも以上に調子よくてさ。でもなんか昼休みの時に世界で一番美しくないって言われたみたいで、もうずーっと怒ってて、しまいには実際に自分の美しさを見せてあげるとか言って、その美しくないって言った人と、会うとか言ってるの」
「なるほど。誹謗中傷を受けたのね」
「誹謗中傷? え、白雪のやつ、ケガしたの?」
「ネットで悪口を言われることよ。ひどい時は、複数人で煽られる時があるからね」
「へえー」
「まずいわ。白雪姫、きっと誹謗中傷に乗っかって、つい感情的になってどこの馬の骨かも知らない人に、会うとか書いちゃったのよ!」
「なんかあわてている様子だけど、それまずいことなの?」
「大いにまずいことよ! チャットは誰が使ってるかわからないから、白雪姫が顔写真晒したのも、煽ってきた人に会う約束したのも、全部いけないことだったのよ……」
そして、つぶやくように言いました。
「場合によっては、白雪姫の城まで襲われるかもしれない!」
「マジで? そこまでまずいことなの?」
アリスはお姉さんのマジでまずいことのように語る雰囲気で、自分もマジでまずいことのように思えてきました。
「じゃあ、どうしたらいいのお姉ちゃん! 白雪、明日学校がおわったら相手と会う約束しちゃったよ?」
あわてるアリスの肩に、お姉さんは手を置きました。
「明日学校もバイトも休みなの。学校がおわったら、白雪姫とその……。どこで会うの?」
「えっと……。公園の噴水前!」
「じゃあそこで待ってなさい! 私も来るからね。絶対なにがあっても、そこから動いちゃダメよ? いいね!」
「はい!」
アリスは返事しました。
「ていうか、お嬢様の家柄なのに、バイトしてんの?」
アリスが聞くと、お姉さんは。
「うちはそれだけ上級の家じゃないってこと。だからあと取りの私とあんたが必要なの! 宿題はやりなさい! シイタケ残すな!」
急に叱りました。アリスはとりあえず、「はい……」と返事しました。
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