アリスと五人のプリンセス

みまちよしお小説課

第一話・世界で一番美しいのは白雪姫? 前編

第1話

1


 都会の喧騒から離れた場所に、豪邸のような二階建ての建物がありました。ここは、私立学園という頭のいい子どもたちが通う学校です。小学部、中学部、高等部がそろっていました。近くから通っている人や、汽車を使って半日かけてやってくる人もいました。遠方から来る人たちのために、寮がありました。小学部六年一組出身のアリスは、学園から徒歩三十分のところに住んでいました。毎日家から歩いて来ていました。都会の喧騒から離れたところとあって、レンガの張っていない森の中を進みますから、雨の日はくつが汚れて大変でした。夏は暑くて、お気に入りの青いドレスが汗だくになりました。でも、学校へ行かないと長女のお姉さんに雷を落とされるので、アリスは一回も休まず遅刻せず、来ました。

 今朝も、アリスは夏の暑さに耐えて、一組の教室にやってきました。

「おはよう〜」

 汗だくな上、くたくたです。

「うふふ! おはようございますわおマヌケさん!」

 同じクラスの白雪姫が、煽りが入ったあいさつをしました。

「なによ? ケンカ売ってんの?」

「とんでもございませんわ。わたくしは世界一美しい姫ですのよ? そのような野蛮で極まりないこと、しませんわ!」

「あっそ」

 アリスは席に着くと、持ってきたうちわで体をあおぎました。

「ちょっと、おじん臭いですわよ?」

 白雪姫がにらみました。

「は?」

「あなたもお嬢様でしたら、扇子を使ったら? まあ最近はサラリーマンでも使ってると聞くので、わたくしはこの、手持ち型扇風機を使ってますがね!」

 白雪姫は高笑いしました。

「はあん」

 アリスはうちわで体を仰ぎました。

「まっいいわ。わたくしとあなたじゃ、月とスッポンですもの。おほほほ!」

 白雪姫はスマホと手持ち型扇風機を持って、廊下へ出ました。アリスは汗が気持ち悪くて、うちわで体を仰ぎ続けました。

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