こんなの、誰が楽しむんだ?

崔 梨遙(再)

1話完結:1100字

 小学校の高学年の頃。僕達は、学校の休憩時間や放課後、何をやっても退屈するようになった。あらゆる遊びに飽きてしまったのだ。


「なんか、新しい遊びを考えなアカンなぁ」


 みんなが知恵を絞っている時、僕が冗談を言った。


「男だらけの野球拳は?」


すると、みんなが盛り上がった。


「それ、おもしろそうやんか」

「それ、やろうぜ!」

「やろう! やろう!」


 僕は焦った。冗談だったのに。おいおい、こんなことをして、誰が楽しめるんだ?



 まずは放課後、学校の前のマンションの屋上で野球拳が行われた。そのマンションには級友が住んでいた。もっと場所を選べよ! と、今なら思う。


 やってみると、どんどん盛り上がってくる。誰かがパンツ1枚になると、盛り上がるのだ。追い詰める側と、追い詰められる側。脱がせたい側と、脱ぎたくない側。


 しかも、全裸になって終わりではないのだ。全裸になって更に負けたら、屋上を裸で1周走るのだ。そこで、ようやく服を着て初期状態に戻れる。


 僕も、2~3回は全裸で走った。その時、僕の秘密が明らかになってしまった。僕は、クラスの誰よりも早くチ〇毛が生えていたのだ。勿論、みんなにいじられた。


「なんやねん、チ〇毛は大人の証や! みんなよりも僕の方が大人ということや」


 この遊びは、意外にもみんなから好評で、遂には昼休みに女子を追い出して教室でもやるようになった。結局、みんな1回は走っていたのだが、懲りない。むしろ、今度こそ勝ってやる! と、やる気になるのだ。


 ほんま、誰が考えたんや? って僕か……。


 ところが、何事にも終わりがある。野球拳が終わる日は突然来た。学校の向かいのマンションの住民から、“小学生が裸で走り回っている”と苦情が来たらしい。


 担任は、なんでもビンタで解決する先生だった。僕等は放課後教室に残された。


「お前等、何をやってたんや?」

「野球拳です!」

「男だけでやってたんか?」

「はい! そうです!」

「お前等なぁ、そんなことして何が楽しいねん?」

「いやぁ、全裸になりたくないという緊張感とスリルが……」

「わかった、もうええわ。今日から野球拳は禁止や! わかったな!」

「はい!」

「みんな一列に並べ!」


 パン! パン! パン! パン! ……順番にビンタ。


「言い出しっぺは誰や!」

「僕です!」

「お前には、もう1発や!」



 僕だけビンタ2回で、みんなが燃えた野球拳は出来なくなった。ここで言わせてもらうと、ジャンケンが弱い僕は最初から気が進まなかった。言い出しっぺが僕だったから言えなかったが、野球拳が禁止になって僕は喜んでいたのだ。



 これって、黒歴史でしょうか? 皆様は、子供の頃、何かおもしろい遊びを考えましたか? 何かあれば、是非教えてほしいです。







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こんなの、誰が楽しむんだ? 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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